Sakana AIが「現代AIの父」と呼ばれるユルゲン・シュミットフーバー氏をチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーに迎えた。狙いは、AIが自らの仕組みを改良し続ける「再帰的自己改善(RSI)」研究の加速だ。巨額の計算資源で殴り合う米大手とは別の土俵、つまり「発想の効率」で勝負する日本発の戦略が、これで一段と鮮明になった。

Sakana AIとシュミットフーバー氏、発表の中身

Sakana AIは9月24日、シュミットフーバー氏が同社のRSI Labの研究を指導すると発表した。同氏は現職を続けながら定期的に東京を訪れ、チームと議論する形をとる。発表文では、言語だけでなく世界モデルに支えられた「フィジカルAI」こそが知能の未来だと位置づけている。(Sakana AI)

同氏は音声や文章など時系列データを扱うLSTMの共同開発者として知られる。参画にあたっては、ニューラルネットワークの基盤と高度なロボティクスを生んだ日本で、二つの世界の橋渡しを担いたいと語ったと報じられている。(ITmedia AI+)

RSI Labが掲げる「計算量より発想」

RSI Labは「AIがAIを作る」技術を研究する専門組織だ。同社は、計算資源の量ではなくアイデアで進歩するという方針を明示し、AI Scientist、Darwin Gödel Machine、ShinkaEvolveといった過去の研究をその系譜に並べている。(Sakana AI RSI Lab)

シュミットフーバー氏は1987年の博士論文で、自分の学習アルゴリズムを自分で改良するプログラムを構想していた。約40年前の構想を、いま東京のスタートアップが実装しようとしている構図になる。

Sakana AIが大手と同じ土俵に立たない理由

ここからは解釈になるが、この人事は「大規模化の競争には乗らない」という宣言として読むのが自然だ。米国勢はデータセンターと電力に数兆円規模を投じ、モデルの規模で差をつけようとしている。資金力で劣る日本企業が同じ勝負をすれば、結果は見えている。

一方、AIが研究そのものを自動化し、自分の設計を改良できるなら、話は変わる。少ない計算資源でも改善のサイクルを速く回した側が勝つ。RSIは、資本の差を「アイデアの回転数」で埋めるための、ほぼ唯一の現実的な道筋だ。

さらに、同社が製造業とロボティクス向けの世界モデルを見据えている点も重要だ。日本には工場と現場のデータがある。言語AIでは後れを取っても、物理世界のAIなら地の利がある。

Sakana AIは、元Googleの研究者らが東京で立ち上げた企業だ。CEOのデイビッド・ハ氏は6月、シュミットフーバー氏とともに、1991年のミュンヘンでの研究にTransformerや教師なし事前学習、蒸留の原型があったとするブログを公開していた。今回の参画は突然の話ではなく、思想的な共鳴の延長線上にある。

シュミットフーバー参画で見るべき次の一手

もっとも、アドバイザー就任は成果そのものではない。RSIはまだ研究段階の領域であり、自己改善がどこまで安全に、実用的な速度で回るかは誰にも分からない。注目すべきは看板の大きさではなく、RSI Labが今後どんな論文とデモを出し、製造現場のパートナーをどれだけ獲得できるかだ。

それでも方向性ははっきりした。Sakana AIは「日本版OpenAI」を目指していない。計算量ではなく発想で戦う、別種のAI企業になろうとしている。今回の人事は、その賭けに最も説得力のある名前を添えた一手だ。

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参照ソース(噂の出どころ)

The Next Frontier: Welcoming AI Pioneer Jürgen Schmidhuber to Sakana AI(Sakana AI)(26/09/24)

「現代AIの父」シュミットフーバー氏がSakana AIに参画 RSI研究のアドバイザーに(ITmedia AI+)(26/09/25)

Sakana AI RSI Lab(Sakana AI)(26/09/24)

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