最高値の翌日に、空気が変わった

相場の景色は、一日で反転する。前日の8月13日、日経平均株価は784円高の6万8308円まで上げ、最高値圏で活気づいていた。ところが8月14日の東京市場は一転して続落で始まる。日経平均は239円安の6万7002円で寄り付いた。(株式新聞Web、26/08/14) 前日の高揚感が、翌朝には冷え込んでいる。理由は日本の企業業績ではない。海の向こう、中東からやってきた不安だ。決算の追い風で株価を持ち上げてきた夏の相場に、久しぶりに外からの逆風が吹き込んだのである。

火種は中東、伝わったのは原油

きっかけは地政学リスクの再燃だった。米国株は前日、中東情勢の不透明感を嫌気してダウ、ナスダックがそろって下落。東京市場はその弱い地合いをそのまま引き継いだ。市場では中東情勢の再緊迫化で投資家心理が悪化したと指摘されている。(フィスコ(Yahoo!ファイナンス)、26/08/14) 見逃せないのは、この不安が原油という導線を伝って株式へ届いた点だ。産油地帯の緊張は原油先物を押し上げ、WTIは一時、前週比で5%超も上昇した。原油高はコスト増とインフレ再燃を連想させる。つまり今回売られたのは、業績への失望ではなく「物価がまた上がるかもしれない」という警戒だった。

昨日の安心が、今日の不安に化ける

皮肉なのは、つい前日まで市場が逆の材料で安堵していたことだ。8月12日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%へと鈍化し、追加利上げ観測が後退したばかりだった。物価が落ち着いたから安心――そう受け止めた矢先に、原油高が「やはりインフレは終わっていない」と冷や水を浴びせた。これが意味するのは、今の相場が単一の物語で動いていないという事実だ。金融政策の緩和期待と、地政学が呼ぶ資源インフレ。相反する二つの綱を、市場は日替わりで引き比べている。だからこそ、一本の指標や一報のニュースで方向が大きく振れる。

円安162円が重ねる、もう一枚の重し

ここに為替が絡む。14日午前のドル円は162円台半ばで推移し、歴史的な円安水準が続いた。円安は輸出企業には追い風だが、原油をはじめ輸入コストを膨らませる側面もある。原油高と円安が同時に来れば、国内の物価上昇圧力は二重にかかる。株高・円安・資源高が並走する今の構図は、追い風と向かい風が同じ船に同乗しているようなものだ。相場が最高値圏にあっても足場が意外にもろいのは、この綱引きの均衡の上に立っているからにほかならない。

見るべきは株価でなく、原油の落ち着き

今回の下げを「調整の範囲」で片づけるのは早計だ。中東発の緊張が長引き原油が高止まりすれば、利上げ観測の後退という前提そのものが崩れる。逆に緊張が和らぎ原油が落ち着けば、業績相場は再び主導権を取り戻すだろう。つまり当面の焦点は、日々の株価の上下ではなく、原油価格が沈静化に向かうかどうかにある。最高値の翌日に急落した一日は、業績が支える強い相場にも地政学という死角があることを、静かに突きつけた。投資家が確かめるべきは、株価の高さではなく、その足元を揺らす原油の温度である。

参照ソース(情報の出どころ)

日経平均が続落スタート、米国株安できのうの弱い地合い継続=14日寄り付き(株式新聞Web、26/08/14)
日経平均は大幅続落、中東情勢の再緊迫化で投資家心理悪化/相場概況(フィスコ・Yahoo!ファイナンス、26/08/14)
相場展望8月13日号 米国株:株価高値もバフェット指数「割高」示唆(財経新聞、26/08/13)

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