スマートグラスは長らく「未来のガジェット」のまま、いつまでも未来から動かなかった。試作品が話題になり、価格と実用性の壁に阻まれ、また忘れられる。その繰り返しだった。だが2026年後半、潮目が変わろうとしている。Metaが、スマートグラスを「年に複数モデル」のペースで投入する量産フェーズへ踏み込むのだ。これはガジェットを、実験品からスマホのような工業製品へと格上げする動きにほかならない。
「年4モデル」という物量作戦
報じられている計画はかなり具体的だ。Metaは2026年末までに少なくとも4つの新型スマートグラスを投入するとされ、コードネームは「Modelo」が最短で6月、「Luna」や「RBM2 Refresh」が秋、限定・上位版とみられる「Mojito VIP」が12月に控える。(Gadget Gate、26/06月) 価格帯や用途を変えた複数モデルを矢継ぎ早に出す──これは、ひとつの完璧な製品を待つのではなく、数を出して市場を覆い尽くす戦略だ。スマートフォンが廉価版から最上位まで幅広く展開して普及したのと、同じ道筋をなぞっている。
ディスプレイ内蔵の上位機も視界に入る。レンズ内に小型画面を備え、通知やナビ、AIアシスタントとの対話を表示する「Hypernova」級のモデルは、9月のMeta Connectでの登場が取り沙汰され、価格は当初予測より抑えられるとの見方が出ている。(ライフハッカー・ジャパン、26/06月) 高機能モデルの価格を下げてくる構えは、Metaが「少数の愛好家向け」から「多くの一般層へ」と狙いを切り替えた証拠だ。
なぜ量産フェーズが「今」なのか
タイミングには明確な理由がある。第一に、AIアシスタントがようやく実用水準に達したことだ。グラスにマイクとカメラを積み、AIと自然に会話できる体験は、数年前には成立しなかった。眼鏡型デバイスの価値は、画面の有無よりも「AIと常時つながる窓」になれるかどうかで決まる。その前提が整った今こそ、量産で先行者の地位を固める好機だ。
第二に、ライバルの接近がある。Googleはサムスンやアイウェアブランドと組み、2026年に複数のAIスマートグラスを準備している。秋以降、各社の製品が一斉に出そろう情勢だ。この一斉投入レースで主導権を握るには、品質を磨くだけでは足りない。数を出し、店頭とユーザーの顔に「当たり前のように」載せてしまうことが効く。Metaが物量に賭けるのは、スマートグラスを文化として定着させる側に回るためだ。
メガネがスマホになる日
もちろん、計画通りに普及が進む保証はない。過去にもスマートグラスは何度も「今年こそ」と言われ、そのたびに価格と使い勝手の壁に跳ね返されてきた。年4モデルという物量も、ひとつでも外せば在庫と開発費の重荷になる。賭けの大きさは相応に大きい。
それでも、Metaの動きが業界の段階を一段引き上げたことは間違いない。一点豪華主義の試作品を待つ時代は終わり、複数モデルを回しながら市場を作りにいくフェーズに入った。これはまさに、スマートフォンが歩んできた量産と普及の道だ。2026年後半、メガネがスマホのように「毎年新型が出て、価格帯で選ぶ」製品へと変わり始める。スマートグラス元年という言葉は、これまで何度も空振りしてきた。だが今回は、物量という実弾を伴っている。違いは、そこにある。





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