あの池井戸潤が、まさかの箱根駅伝
『半沢直樹』『下町ロケット』で知られる池井戸潤といえば、銀行や町工場を舞台にした逆転劇の名手だ。そんな作者が次に選んだ題材が箱根駅伝、と聞いて意外に思った人は多いはずだ。しかもドラマ版の主役は、たすきをつなぐランナーではない。中継カメラの向こう側、テレビ局のプロデューサーである。
日本テレビ系で10月10日にスタートする連続ドラマ『俺たちの箱根駅伝』は、原作を池井戸潤が手がける話題作だ。主演の大泉洋が演じるのは、大日テレビのチーフプロデューサー・徳重亮。選手側と、その一瞬を全国に届けようとする放送スタッフ側、両方の視点から箱根を描くのが最大の特徴とされる。(ORICON NEWS 26/09/03)
走らない主人公という発想
普通、駅伝ドラマといえば選手の青春や監督の情熱を描く。ところが本作はカメラを一台、沿道ではなく中継車と副調整室に向けた。ここに池井戸作品らしさが凝縮されている。組織の歯車として働く名もなき個人が、プライドを賭けて大舞台に挑む。その構図は、銀行員でも工場の職人でも、そしてテレビマンでも変わらない。
脇を固める顔ぶれも厚い。センターディレクター・宮本菜月役に伊藤沙莉、明誠学院大学陸上競技部の新監督・甲斐真人役に山下智久。選手を追う現場と、それを映す現場が交互に描かれることで、いつもの箱根中継がまったく別の物語に見えてくる仕掛けだ。(本の話(文藝春秋) 26/06/05)
正月の「見慣れた画」を裏返す
面白いのは、この作品が扱う箱根駅伝が、視聴者にとってあまりに見慣れた正月の風景だという点だ。誰もが一度は見たことのある往路・復路の中継。その「当たり前」の裏で、どれだけの人間が徹夜で機材を運び、電波をつなぎ、たった数秒の名場面を狙っているのか。ドラマはそこに光を当てる。見慣れた画の裏側を暴かれると、人はもう一度その画を見たくなる。
秋クールは続編やリメイクがずらりと並ぶ。そのなかで完全な新規ドラマである本作が強いのは、「箱根駅伝」という誰もが知る土台の上に、「テレビ局の内幕」という誰も知らない世界を重ねた点にある。既知と未知の掛け合わせは、池井戸作品が毎回勝ってきた王道パターンでもある。
これは駅伝ドラマの顔をしたテレビマンの物語
だから『俺たちの箱根駅伝』は、スポーツ根性ものとして観ると本質を見誤る。これは駅伝の皮をかぶった、働く人間の逆転劇だ。走るのは選手だが、勝負しているのは中継を成立させる裏方たち。視聴者が正月に何気なく眺めるあの映像が、どれだけの執念で作られているのかを知ってしまえば、来年の箱根の見え方は確実に変わる。
大泉洋という、熱さと軽妙さを同時に出せる俳優を「走らない主人公」に据えた時点で、この企画は勝ちに来ている。派手な続編がひしめく秋の夜に、一番静かで一番熱いドラマになる可能性が高い。放送が始まったら、まずは中継スタッフの視点に注目して観てほしい。
参照ソース(噂の出どころ)
ドラマ『俺たちの箱根駅伝』作品情報(ORICON NEWS, 26/09/03)
池井戸潤原作の日本テレビ系連続ドラマ『俺たちの箱根駅伝』3ショットビジュアル解禁(本の話/文藝春秋, 26/06/05)




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