統計史上最高の「2519兆円」
家計が持つお金が、また過去最高を更新した。日銀が9月17日に公表した資金循環統計の速報によると、6月末時点の個人金融資産は2519兆円に達し、前年同期比で11.0%増えた。背景にあるのは言うまでもなく株高で、日経平均が6月に初めて7万円を超えた勢いがそのまま数字に表れた形だ。(nippon.com)
2519兆円という金額は、国の一年の経済規模の四倍を優に超える。ニュースの見出しだけを見れば、日本人全体が一気に豊かになったかのように読める。だが中身を開けると、そう単純な話ではないことが分かる。
増えたのは株、動かないのは預金
内訳を見ると、増加をけん引したのは明確に株式だ。株式は前年から47.0%増えて486兆円、投資信託も36.8%増の193兆円と、どちらも過去最高を記録した。一方で現金・預金は0.5%増の1132兆円にとどまり、ほとんど動いていない。(時事通信)つまり資産全体を押し上げたのは、家計が新たに投資へ動いたからではなく、すでに持っていた株の評価額が膨らんだからだ。
「過去最高」の中身は偏っている
ここに、この記録の本質がある。現金・預金は依然として金融資産の四割超を占め、家計にとって最大の置き場所であり続けている。株や投信で資産を大きく伸ばせたのは、もともと相応の株式を保有していた層に限られる。預金しか持たない世帯にとって、2519兆円という数字は自分の暮らしとは無関係な他人事だ。過去最高の裏で起きているのは、資産を持つ人と持たない人の差が、株高の分だけ静かに広がったという事実である。
数字の大きさより、誰の資産が増えたかを見る
2519兆円は、日本経済が健全に成長した証ではない。株を持つ層の含み益がふくらんだ記録と読むべきだ。現金を抱え続ける多数派にとって、円安下で目減りする預金の価値こそが現実の問題であり、統計の華やかさとは対照的である。見るべきは総額の大きさではなく、その増分が誰の口座に積み上がったのかだ。この偏りが続く限り、次に相場が下げたとき、痛みもまた一部に集中する。過去最高という言葉に浮かれず、自分の資産がどちら側にあるのかを冷静に確かめておきたい。





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