戦争が起きたのに、金は下がった
「有事の金」という言葉を信じてきた投資家にとって、2026年の春から初夏は理解しがたい相場だった。中東では米・イスラエルとイランの軍事衝突が起き、ホルムズ海峡の通航不安まで取り沙汰された。教科書どおりなら金は急騰するはずだ。ところが現実は逆で、6月に入って金価格はむしろ売られる場面が目立った。専門メディアも「複数の売り圧力が同時にかかっている」と指摘している。(EBC Financial Group)(26/06/09)
有事に買われるはずの資産が、有事のさなかに下げる。この逆説の中に、いまの金相場の本質が詰まっている。
「リスクオフ=金高」が効かなくなった構図
下落の一因は、金そのものではなく対比される資産の側にある。中東緊張が和らぐ思惑が出れば資金は株へ戻り、緊張が高まればドルと米国債が選ばれる。金は「最後の逃避先」の座を、局面ごとに奪われている。野村の解説でも、中東情勢の悪化局面でかえって金が下落した背景として、ドル高と米金利の動きが挙げられている。(野村證券 ウェルスタイル)(26/06)
つまり「危機が来れば金」という単純な反射は、ドル・金利・株という他の選択肢が強いときには成立しない。2026年の金は、地政学ニュースのたびに上下に激しく振らされる神経質な資産になっている。
それでも構造的な支えは消えていない
短期の乱高下とは別に、長期の地盤は固い。2026年1〜3月期の世界の金需要は前年同期比で増え、金額ベースでは過去最高水準に達したと報じられた。新興国の中央銀行による「脱ドル化」の買いが、相場の底を支え続けている。(Revalue News Media)(26/06)
大手金融機関の見通しも強気だ。ゴールドマン・サックスは2026年末までに1オンス5400ドル、JPモルガンは6300ドルへの上昇を見込むとされる。短期の急落は、長期の上昇トレンドの中の調整と読むほうが筋が通る。
個人投資家が読み違えやすい点
ここで多くの個人が誤るのは、「有事だから今すぐ金」という飛びつきだ。実際には、有事の第一報で金が跳ねても、停戦観測や利上げ観測で簡単に剥がれ落ちる。短期のニュースで売買すれば、振り回されて負けやすい相場である。むしろ意識すべきは、中央銀行が淡々と積み増す構造的な買いのほうだ。
金は「守りの王様」から「気まぐれな主役」へ変わった
2026年の金が教えるのは、避難資産の地位が固定ではないという現実だ。ドルと金利と株が強いとき、金は一時的に脇役へ追いやられる。だが脱ドル化という地殻変動が続く限り、舞台から消えることはない。短期の値動きに賭けるのではなく、長期の構造的な買い手が誰かを見る。それが、神話が崩れた後の金との正しい付き合い方になる。
参照ソース(情報の出どころ)
EBC Financial Group「金価格がなぜ下落している|2026年6月9日最新相場から見る3つの売り圧力」(26/06/09)





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