「Mythos級」がついに誰の手にも届いた

Anthropicは2026年6月9日、これまで一部のサイバーセキュリティ企業や重要インフラ組織にしか開放してこなかった最上位モデル群「Mythos」の一般公開版として「Claude Fable 5」を投入した。従来のフラグシップだったOpus層のさらに上に置かれた新ティアで、コーディング指標SWE-bench Proでは80.3%を記録したという。価格は入力10ドル・出力50ドルとOpus 4.8の2倍。サブスクでは6月22日まで追加料金なしで使えるが、23日以降は追加クレジットが必要になる。(ITmedia/26/06/10)

公開数日で「破られた」現実

ところが、この最強モデルは賞賛と同時に不穏な話題をまとった。公開からわずか数日で、著名な研究者によってジェイルブレイク(保護機能の回避)が報告されたのだ。複数のAIを連携させる「パック・ハント」と呼ぶ手法や、危険情報をいったん無害な断片に分解して後から再構成する手口が効果的だったとされ、約12万字に及ぶシステムプロンプトの流出も伝えられた。「当事者の主張という前提で読むのが公正」としつつも、複数AIを束ねたパイプライン全体では穴が生まれうるという構造的な問題が指摘されている。(innovatopia/26/06/11)Anthropicは公開前に1,000時間以上の外部セキュリティ検証を実施していたというから、皮肉な結果だ。

それでも開放を急いだ理由

背景にあるのは競争のスピードである。同じ週、OpenAIはユーザー争奪を見越してAPI価格の大幅値下げを検討し、GoogleもAI Plusを月額725円へ下げたと伝えられた。(note/26/06)最上位の性能で頭一つ抜けておかなければ、値下げ合戦のなかで「高いだけのAI」になりかねない。AnthropicはSECへIPOの草案を非公開提出し、企業価値は9,650億ドルに達したとされる。上場を前に「世界最高のモデルを持つ会社」という看板は、何より雄弁な決算資料になる。封印を解く判断は、技術ではなく経営の判断だった。

強さと安全はトレードオフになった

私はFable 5の登場を、AI業界が「安全に作る」から「速く出して直す」へ静かに舵を切った象徴だと見ている。性能で抜きん出るほど、悪用の余地も比例して広がる。最強を一般開放した代償は、これから静かに表面化していくだろう。ユーザーが本当に問うべきは「どれだけ賢いか」ではなく「その力に誰が責任を持つのか」だ。賢さの競争が安全の競争を追い越した今、その問いはこれまで以上に重い。

参照ソース(噂の出どころ)

Anthropic、ミュトス級AI「Claude Fable 5」を一般公開(ITmedia・26/06/10)
Claude Fable 5、公開数日でジェイルブレイクか(innovatopia・26/06/11)
OpenAIが値下げ検討・AI価格戦争の全貌(note・26/06)

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