スマートウォッチで何を測れるか、という競争が急速に変わっている。心拍数、血中酸素濃度、睡眠、体温。これらはすでに多くのウェアラブルが対応している。次の「聖杯」と呼ばれるのが、針を刺さずに血糖値を測る「非侵襲的グルコースモニタリング」だ。Samsungはこの技術の実用化に向けて、今まで以上に踏み込んだメッセージを発信し始めている。
Samsungが公式に宣言した「次の一手」
2025年1月、SamsungはGalaxy Unpackedに合わせてサンノゼでヘルスフォーラムを開催した。登壇したのはモバイルeXperience事業のデジタルヘルスチーム担当シニアバイスプレジデント、Dr. Hon Pak氏だ。彼はここで「私たちのチームは光学ベースの非侵襲的な継続的グルコースモニターに取り組んでいる。タイミングは言えないが、進捗にはとても興奮している。正しくやり遂げれば、これはゲームチェンジャーになる」と明言した。これは「うっかり」の発言ではなく、翌日Samsung公式ニュースルームにも同趣旨の論説記事が掲載された。(SamMobile)
なぜ「今」なのか――糖尿病市場の巨大さ
背景には明確なビジネスロジックがある。世界的に糖尿病および予備軍の人口は急増しており、血糖値の管理は日常的な医療行為になっている。現在、連続血糖測定(CGM)には皮膚にセンサーを貼り付ける機器が必要で、コストも手間もかかる。もし腕時計で針なしに血糖値がリアルタイム測定できれば、その市場インパクトは計り知れない。
Tom’s GuideはSamsungのGalaxy Watch 8に関するリポートの中で、「Samsungがこれほど明確に言及するということは、技術的な実現性に相当な自信があるからだ。単なる可能性の話であれば、ここまで公式に語ることはしないだろう」と指摘している。(Tom’s Guide)
Appleとの「先陣争い」が激化
同じ技術をAppleも追いかけている。Apple Watchへの血糖値測定機能導入は2017年ごろから噂されてきたが、2026年現在も実現には至っていない。その間にSamsungが先手を打てれば、スマートウォッチ市場での競争力に大きな差がつく。Dr. Pak氏も「Appleも同様の取り組みをしている」と認識しており、「レースに勝つ」意識は明白だ。
現時点でGalaxy Watch Ultraはすでに血圧測定(キャリブレーション必要)、睡眠時無呼吸検知、心電図(ECG)など医療グレードに近い機能を搭載している。血糖値測定はその延長線上にある、最後の大きなピースだ。
FDA規制という「高い壁」
ただし、課題も明確だ。米国FDAは「血糖値を測定すると主張するスマートウォッチやスマートリングを購入しないよう」と警告を出している。市場に出回っている製品の多くが正確な測定をできていないからだ。SammyGuruはこの点を指摘し、「技術が実現できたとしても、FDAの承認を得るまでの道のりは別の話だ」と論じている。正しいデータで糖尿病患者を管理できなければ、むしろ危険だという本質的な指摘だ。(SammyGuru)
「ゲームチェンジャー」になれるか
Dr. Pak氏が繰り返す言葉は「if we do it right(正しくやり遂げれば)」だ。この一言に、現状の難しさと同時に、Samsungの覚悟が凝縮されている。単に「できた」ではなく、「医療として信頼できる精度」を持って市場に出すことへの意思表明でもある。
Galaxy Watch 8の登場は2026年夏が予想されている。そこで血糖値測定機能が正式搭載されるかどうかは、スマートウォッチ市場の版図を塗り替える分岐点になる。Appleとのレースは、テクノロジーの話であると同時に、医療市場の覇権争いでもある。
参照ソース(噂の出どころ)
Galaxy Watches might get blood glucose monitoring sooner than we thought — SamMobile (25/04/20)
Samsung Galaxy Watch 8 test firmware just revealed three new models — Tom’s Guide (25/03/30)
Samsung’s Blood Glucose Monitor for Galaxy Watch Is a Work in Progress — SammyGuru (25/01/28)




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