956円安が、大引けでプラスに転じた一日
9月10日の東京市場は、値動きの主導権がどこにあるのかを冷酷なほど分かりやすく示した。前日の米国株安と中東情勢の緊迫、原油高を嫌気して売りが先行し、日経平均は午前中に一時956円安の6万4186円まで沈んだ。ところが午後、風向きが一変する。「TSMC(台湾積体電路製造)が発表した8月月次売上高が前年同月比53.3%増と好調だったことで買いが加速し、大引け間際にプラス圏へ浮上した」という。結局、終値は前日比128円高の6万5270円。1000円近い下げを消したのは、内需でも為替でもなく、台湾から届いた一行の数字だった。(ToMO Blog・26/09/10)
指数を動かすのは、ほんの一握りの名前
この日の日経平均を押し上げた寄与度上位は、アドバンテスト、リクルート、村田製作所、キオクシア、TDK。押し下げたのは東京エレクトロン、フジクラ、イビデンといった顔ぶれだった。半導体関連が上位も下位も占め、指数の表情はこの一群の綱引きでほぼ決まっている。6万5000円という水準は、もはや日本経済全体の体温ではなく、半導体という一分野への集中的な賭けの結果に近い。日経平均は、実質的に「半導体指数」へと姿を変えつつある。
号砲は日本ではなく海外から鳴る
見逃せないのは、その号砲を鳴らすのが国内の材料ではないという事実だ。日本株の生殺与奪を、台湾の受託製造大手の月次売上という「外」のデータが握っている。輸出企業の重荷になる円高、原油高によるインフレ懸念、日銀の利上げ観測——足元の相場は「日銀の利上げ観測と原油高が、円高を進行させ相場の重荷になる」構図が指摘されるほど不安定だが、それらをまとめて上書きしたのがTSMCの一撃だった。国内要因で下げ、海外の半導体データで戻す。この非対称さこそ、いまの日本株の危うい実像である。(財経新聞・26/09/11)
数字の大きさより、中身を見るべき局面
過去最高値圏で推移する日経平均を見て、日本企業全体が強くなったと受け取るのは早計だ。実態は、半導体という細い柱に指数全体が寄りかかっている状態に近い。柱が太い間は上を目指せるが、AI投資の一巡や台湾の月次が鈍る局面では、同じ細さがそのまま下げの速さに変わる。9月10日の956円安から128円高への振れ幅は、その振り子の大きさを予告している。見るべきは6万5000円という数字の大きさではなく、その数字を誰が支えているのかという中身のほうだ。指数の高さに安心する前に、集中のリスクを直視しておきたい。





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