利上げが近いのに、円は売られ続けている

教科書どおりなら、利上げが近づく通貨は買われる。ところが2026年秋の円相場は、その常識を裏切っている。日銀の追加利上げが目前だと市場が織り込んでいるにもかかわらず、ドル円は下げるどころか一時160円台をうかがう場面まで出た。市場では「日銀の9月利上げ確率は約7割、10月まで含めればほぼ確実」との見方が広がっている。(外為どっとコム マネ育チャンネル/26/08/20)

利上げは本来、円高要因のはずだ。それでも円安が止まらない。この「ねじれ」こそが、今の日本経済が抱える問題の核心を映している。目先の金利差だけを見ていては、この動きは読めない。

金利差では説明しきれない「構造」の問題

なぜ利上げ観測が高まっても円は戻らないのか。専門家の分析はおおむね一致している。「円安の根っこは日米の金利差ではなく、より深い構造要因にある」という指摘だ。輸入に頼るエネルギーや食料、拡大するデジタル赤字、海外へ流れ続ける投資マネー。これらは日銀が金利をわずかに動かした程度では反転しない、日本の稼ぐ力そのものの弱さに根ざしている。

実際、市場のプロも強気の円高予想には転じていない。野村證券は「中東情勢で強まる米ドル高圧力」を背景に、2026年末のドル円見通しを152.5円へ引き上げた。(NOMURA ウェルスタイル/26/08)つまり利上げがあっても、円が大きく買い戻される展開を本命視していない。裏を返せば、利上げは円安の「特効薬」にはならないと市場は見切っているのだ。

原油高が効き方を変える

もう一つ、話をややこしくしているのが原油高だ。中東情勢の緊迫を背景に原油価格が上昇し、9月2日の東京市場では世界的な金利上昇と重なって日経平均が一時2,000円近く急落する場面もあった。円安と原油高が同時に進めば、輸入コストは二重に膨らむ。しかも日本の場合、原油高はアメリカのように物価を押し上げるより、企業収益や家計を痛めて景気を冷やす方向に働きやすい。

ここに日銀のジレンマがある。物価を抑えるには利上げが要る。だが原油高で弱った景気に利上げを重ねれば、腰折れのリスクが増す。強く踏み込めない中央銀行を、市場は見透かして円を売る。この悪循環が、利上げ局面なのに円安という奇妙な絵を描いている。

数字ではなく「なぜ動いたか」を見よ

結論を言えば、今回の円安は一時的な金利差ではなく、日本の実力に対する市場の評価そのものだと受け止めるべきだ。利上げ一回で潮目が変わると期待するのは危うい。円の水準を占うなら、日銀が何%まで金利を上げるかよりも、日本が構造的な赤字体質を変えられるかを見るほうが本質に近い。当面のドル円は、利上げでいったん戻す場面があっても、150円前後で高止まりする展開を軸に置いておきたい。数字の上下ではなく、その裏で何が売られているのかを読むことが、今の相場では何より重要になる。

参照ソース(噂の出どころ)

【2026年ドル円見通し】日銀9月に利上げか?それでも円安が止まらない3つの理由|外為どっとコム マネ育チャンネル(26/08/20)
2026年末の米ドル円見通しを152.5円に引き上げ 中東情勢で強まる米ドル高圧力|NOMURA ウェルスタイル(26/08)

コメントを残す

Trending