「血糖値が測れるスマートウォッチ」、実は一台も存在しない

通販サイトを開くと、「採血なしで血糖値がわかる」とうたうスマートウォッチが数千円でずらりと並ぶ。健康を気にする人ほど気になる機能だ。ところが結論から言ってしまうと、指を刺さずに血糖値を正しく測れると医療機器として認められたスマートウォッチは、2026年のいまも世界に一台も存在しない。

日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)が承認した同種の機器は現時点でなく、日本糖尿病協会も、非侵襲型機器で測った血糖値を治療に用いることは思わぬ低血糖や高血糖を招く危険があるとして、使用しないよう強く推奨している。(日本糖尿病協会)

規制当局は「使うな」と名指しで警告している

これは日本だけの話ではない。米国のFDAは2024年2月21日に、穿刺せずに血糖値を測定できるとうたうスマートウォッチやスマートリングを血糖測定に使わないよう、明確に注意喚起している。表示された数値をもとにインスリン注射を行えば、低血糖や高血糖のリスクがあるためだ。(名取とおる内科・糖尿病クリニック)

つまり「血糖値測定機能付き」という売り文句そのものが、規制当局からすれば警告の対象なのだ。安いから精度が低い、という次元の話ではない。原理的に、腕の表面から採血なしで血糖値を正確に読む技術が、まだ実用の水準に達していない。

AppleもSamsungも「まだできていない」

「大手ならできているのでは」と思うかもしれない。だが、AppleもSamsungも非侵襲の血糖値測定には長年取り組んでいるものの、最新機種にもそのセンサーは搭載されていない。世界有数の技術力とお金を投じても、腕時計サイズで実現できていないのが現状だ。(スマートウォッチ沼)

裏を返せば、数千円の無名ブランドが「血糖値測定対応」と表示しているとき、それはAppleすら越えられていない壁を軽々と越えた製品ではなく、単に測っているふりをしている表示だと考えたほうが自然だ。

では、あの数値は何を出しているのか

安価な機種が表示する血糖値らしき数字は、脈拍や皮膚のセンサー情報から推定した「参考値」にすぎないことが多い。運動の目安として眺めるぶんには害はないが、これを本物の血糖値と信じてしまうと危険だ。とくに糖尿病でインスリンを使う人が、この数値を頼りに投与量を決めれば、命に関わる。医療機器認定を受けているのは、心電図や、一部の血圧測定機能などに限られる。

だからこそ、スマートウォッチのヘルスケア機能を見るときは、「何が測れると書いてあるか」ではなく、「それが医療機器として認められているか」で判断すべきだ。

売り文句ではなく「認証の有無」で選べ

「血糖値が測れるスマートウォッチ」が一台も承認されていないという事実は、機能表示をうのみにする怖さをそのまま示している。数千円で健康管理を丸ごと任せられる時代は、血糖値に関してはまだ来ていない。読者が確認すべきは機能欄の華やかさではなく、その機能に医療機器としての裏付けがあるかどうか、その一点である。

参照ソース(噂の出どころ)

スマートウオッチによる血糖(グルコース)測定に関する見解。(日本糖尿病協会)
血糖測定機能付きのスマートウォッチにはご注意を(26年)。(名取とおる内科・糖尿病クリニック)
スマートウォッチで血糖値測定の嘘の実態を検証(26年)。(スマートウォッチ沼)

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