供給が減れば価格は上がる。教科書どおりの話が、いま首都圏の新築マンションで起きている。ただし今回の供給減は、売れないから作らないのではない。売れるものしか作らないから減っている。氷河期という言葉から連想される風景とは、中身がまるで違う。
過去50年で最低という水準
2026年の首都圏新築マンション供給戸数は約2万3000戸と、過去50年で最低水準になる見通しとされている。デベロッパー各社は価格が高騰しすぎたことによる売れ残りリスクを警戒し、供給を絞る傾向を強めている。(日本経済新聞 26/07)
2025年の発売戸数はすでに2万1962戸で、1973年以降の最少を更新している。一方で同年の平均価格は9182万円、㎡単価は139.2万円といずれも最高値を更新した。(LIFULL HOME’S PRESS 26/07)
数が減って値段が上がる。これだけ見れば単純な品薄インフレだが、実際に起きているのは市場の入れ替えだ。
「作れない」ではなく「作らない」
建設費の高騰、用地不足、職人不足、環境・防災性能への対応といったコスト要因が積み上がるなかで、高値で売れる都心・高額帯にしか新築が建ちにくい構造が鮮明になっている。
ここが重要な点だ。原価が上がったとき、事業者には二つの道がある。値上げして売るか、事業をやめるか。郊外・中価格帯では値上げしても買える層がいないため、後者が選ばれる。結果、統計に残るのは値上げが通った物件だけになり、平均価格が押し上げられる。
つまり平均価格9182万円という数字は、マンションが一律に9000万円台になったことを意味しない。9000万円台で売れる物件しか発売されなかった、という選抜の結果である。この違いを取り違えると、市場全体が高騰していると誤読することになる。
タワマンは二極化の中心にいる
タワーマンション市場は「プレミア新築」と「優良中古」に二極化が進むと見られており、新規供給は高価格帯が中心で、都心部の新築タワマンはさらなる価格上昇の可能性がある。東京23区の年間平均価格は前年比34.6%増の1億393万円に達している。
タワマンは用地の希少性と容積率のかけ合わせで成立する商品なので、地価と建築費が上がるほど「タワマンでしか採算が合わない」場所が増える。皮肉なことに、コスト高がタワマンの相対的な合理性を高めている。板状の中層マンションが建てられない土地でも、タワーなら事業が回る。
買い手側では選別が始まっている
2026年の東京都心中古マンション市場を一言で表すなら高値圏のまま選別が始まった市場で、問い合わせが集まる物件と、価格調整を繰り返しても動かない物件の差が以前より明らかに大きくなっているとされる。(アイカワFC 26/07)
売り出し価格と成約価格の乖離が広がっている状態は、相場の上昇局面ではなく踊り場のサインだ。持っている人は強気の値段を出し続け、買う人はごく一部の条件を満たす物件にしか反応しない。取引が成立しないまま在庫だけが積み上がる。
千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京の都心6区は、外国人投資家や国内富裕層の資産防衛需要が根強く、価格は高止まりか緩やかな上昇を続ける可能性が高いと見られている。逆に言えば、資産防衛需要が届かない外周部は同じ論理では支えられない。
この市場で見るべきは価格ではなく供給の中身
新築が過去50年で最少になるという事実から引き出すべき結論は、「今買わないと二度と買えない」ではない。供給が絞られている間、市場に出てくるのは高額帯に偏るため、平均価格という指標そのものが実勢を映さなくなる、ということだ。
いま検討するなら、平均価格の推移を追うのは時間の無駄に近い。見るべきは、自分が買える価格帯の物件が何戸発売されているかという一点である。その帯の供給がゼロに近づいているなら、待っても状況は改善しない。逆に都心高額帯の話は、その帯を買わない人にとっては別世界のニュースでしかない。氷河期という言葉が指しているのは価格の氷河期ではなく、選択肢の氷河期だ。
参照ソース(噂の出どころ)
新築マンション「氷河期」時代に 26年の供給数は過去50年で最低水準(日本経済新聞)
首都圏の新築マンション供給は1973年以降の過去最少、平均価格は9,182万円で最高値を更新(LIFULL HOME’S PRESS)





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