自作PCの世界で、長年の常識が一つ壊れた。「組むなら最新世代」――CPUもマザーボードもメモリも新しいプラットフォームで揃えるのが基本だったが、2026年の夏はその逆が正解になりつつある。犯人はメモリだ。DDR5の価格が異常な高止まりを続けた結果、あえて一世代前のDDR4環境で組む“型落ち構成”が、コストパフォーマンスの面で新型を上回るという逆転現象が起きている。
DDR5は「反転上昇」まで始めた
まず、価格がどれほど壊れているかを確認したい。2026年7月時点で、標準的なDDR5 32GBキット(16GB×2)は約5万6千〜6万2千円、64GBキットは約9万5千円前後、128GBキットは29万円台という高値で推移している。しかも下がるどころか、7月第1週には32GBキットが週プラス3.7%、64GBキットがプラス1.9%と、下落傾向が終わって反転上昇に転じたと報じられている。(ゲーミングスタイル/26/07) 数年前なら1万円台で買えた容量が、今や数倍の値札をつけている。
この高騰は一過性ではない。2025年7月から2026年1月までの半年でDDR5モジュールは平均4.4倍に跳ね上がったとされ、その勢いは容易には収まっていない。(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z/26/01) メモリはもはや、PC自作における最大の予算項目になってしまった。
原因はAIバブルと「Micronの撤退」
なぜここまで上がったのか。背景にあるのはAIブームだ。生成AI向けのHBM(広帯域メモリ)の増産が、通常のDRAM生産ラインを圧迫し、一般向けメモリの供給が細った。加えて2025年12月、Micronが一般向けメモリ市場から事実上撤退し、HBMとエンタープライズ向けに完全シフトしたことが明らかになった。(EE Times Japan/25/12/01) 供給側の一角が消費者向けから手を引いたことで、需給の綱引きは決定的に売り手優位へ傾いた。最も現実的なシナリオは2027年前半までの高止まりだとされ、待っていれば安くなるという従来の感覚はしばらく通用しない。
「型落ちで組む」が新しい定石になった
この状況で賢い自作派が取り始めた選択が、DDR4環境への意図的な回帰だ。Intel第12〜14世代やRyzen 5000シリーズなど、DDR4対応のCPUとマザーボードで組めば、メモリはまだ在庫が豊富で価格もこなれており、中古市場にも大量に出回っている。最新のDDR5を数万円で買うより、一世代前のDDR4を余裕を持って積む方が、同じ予算で快適な一台に仕上がる。
ゲーミング用途でも、この判断は理にかなっている。多くのゲームやクリエイティブ作業では、DDR4とDDR5の実性能差は体感で決定的とは言えない。ならば、高すぎるDDR5に予算を吸い取られてCPUやGPUを妥協するより、DDR4で土台を安く固めて浮いた資金を描画性能に回す方が、完成品の満足度は高くなる。「最新こそ正義」という自作の美学が、コスト現実の前で一時停止しているのだ。
いま組むなら「新しさ」より「賢さ」だ
2026年夏の自作PCは、性能を追う趣味であると同時に、部品相場を読む立ち回りの勝負になった。DDR5高騰が2027年前半まで続くのなら、今このタイミングで最新プラットフォームにこだわるのは、割高な時期に最も高い部品を掴みに行くようなものだ。むしろ、値がこなれたDDR4環境で必要十分な一台を組み、相場が落ち着くまで最新世代を見送る。それが、この異常なメモリ相場を生き抜く最も現実的な答えである。自作の醍醐味は最新パーツを積むことではなく、限られた予算で最大の体験を引き出す設計にある。皮肉にも、メモリ危機はその原点を思い出させてくれた。
参照ソース(噂の出どころ)
DDR5メモリ価格【2026年7月最新】32GB・64GBの今の値段と価格推移(ゲーミングスタイル/26/07)
DDR5メモリ、平均4.4倍に高騰。2025年7月から2026年1月までで(ニッチなPCゲーマーの環境構築Z/26/01)
LPDDRが足りない AIブームで価格高騰:2026年のメモリ価格は最大20%上昇か(EE Times Japan/25/12/01)





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