1週間で10兆円積み増した会社

2026年6月22日、キオクシアホールディングスの時価総額が一時60兆円を超えた。前の週から10兆円を上積みし、終値の株価は10万8700円をつけた。米ハイパースケーラーの旺盛な設備投資が材料視され、NANDフラッシュメモリの需給逼迫が株価を押し上げた形だ。ほんの1週間で新興国の国家予算に匹敵する額を上乗せするというのは、通常の株式市場ではまず起きない。それがAIブームの真ん中にいる半導体メモリ企業には起きている。「米ハイパースケーラーの活発な設備投資が材料視された」とのことだ。(日本経済新聞/26/06/22)

再上場からわずか1年半で株価は約75倍

この数字が異常なのは、キオクシアが「新しい会社」だからだ。2024年12月に公開価格1455円で再上場したこの企業は、約1年半後の2026年6月に株価10万円を突破した。単純計算で約75倍。IPO時に買って持ち続けた投資家は、資産を75倍にした計算になる。少し前まで「経営再建中」「上場延期」と報じられていた会社が、である。かつてメモリ事業は好不況の波が激しい典型的な市況産業で、儲かる時期と赤字の時期を数年おきに繰り返す「シリコンサイクルの呪い」に縛られてきた。その市況株が、AI需要という長期の追い風を得て、成長株として値付けされ始めた。ここに投資家の期待の質的な変化がある。(ダイヤモンドZai/26/06/20)

業績が株価に「説明」を与えている

過熱感を警戒する声は当然ある。だが今回のキオクシアは、株価だけが独り歩きしているわけではない点で以前のバブルと質が違う。2026年3月期の通期決算は売上収益2兆3376億円、営業利益8703億円と2年連続で過去最高を更新した。さらに翌四半期のガイダンスでは営業利益1兆2980億円という桁違いの数字を見込む。四半期の営業利益が通期を上回る勢いだ。5月には時価総額でトヨタ自動車を抜いて国内首位に立つ場面もあった。自動車という日本の看板産業を、再上場したばかりのメモリメーカーが数字で追い越したのだ。株価には、少なくとも今のところ業績の裏付けがある。(日本経済新聞/26/06/05)

問われるのは「サイクルは本当に終わったのか」だ

キオクシアの60兆円が象徴するのは、日本株がAIメモリという単一テーマにどれほど依存しているか、という現実でもある。強さの源泉が明確なぶん、逆回転のリスクも明確だ。需給が緩めば、市況株の宿命どおり利益は急速に縮む。今の株価はNANDの供給逼迫が2027年以降も続くという前提に立っている。この前提が崩れた瞬間、75倍の物語は反転する。つまりキオクシア株を買うことは、半導体企業に賭けているのではなく「シリコンサイクルは本当に終わったのか」に賭けているのだ。トヨタを抜いた高揚感の裏で、投資家が本当に見極めるべきはそこにある。

参照ソース(噂の出どころ)

キオクシアの時価総額、一時60兆円超え 1週間で10兆円上積み(日本経済新聞/26/06/22)

キオクシア時価総額45兆円、トヨタ超え国内首位(日本経済新聞/26/06/05)

キオクシアHDの株価の見通しと買い時を解説(ダイヤモンドZai/26/06/20)

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