デビュー前から数万人を巻き込む装置

2026年、日本のアイドル市場はオーディション番組であふれている。JO1やINIを生んだ『PRODUCE 101 JAPAN』は全世界から参加者を募る第4弾『新世界』へ突入し、ファン投票も世界規模で行われる。ABEMAの『iLiFE! 新メンバーオーディション Project i』は総応募4万2000人からたった1人を選ぶ過去最大規模、韓国SBS発の『B:MY BOYZ』は日韓同時放送で日本のファンもリアルタイムに参加する。指原莉乃プロデュースの≠MEも6月26日から追加メンバー募集を始めた。デビュー前の段階で数万人を巻き込むこの仕組みは、もはや採用活動ではなく一大コンテンツだ。(モデルプレス、26/06/26)

完成したグループより「作る過程」が売れる

これほど番組が乱立する理由は単純で、オーディションそのものが完成後のデビュー曲より稼げるからだ。脱落の緊張、成長物語、推しへの投票──視聴者は数カ月にわたり自分の時間と課金を注ぎ込む。デビューする頃には巨大なファンダムが出来上がっている。グループを売るのではなく、グループが生まれる過程を売る。テレビ局や配信サービスにとって、これは低コストで長期間視聴者を縛れる理想の番組フォーマットだ。完成品より製造工程の方が高く売れる、という逆転が起きている。

「参加型」が生む強い忠誠と、消耗

投票で自分が推した練習生がデビューすれば、ファンは応援する側ではなく共同制作者になる。この当事者意識が異常に強い忠誠を生む。一方で副作用も無視できない。落選者の心の傷、勝ち上がった側にのしかかる過剰な期待、そして視聴者側の「推し疲れ」。番組が増えれば増えるほど、限られたファンの熱量は薄く引き伸ばされる。供給が需要を追い越しつつあり、感動の総量は水増しできない。

アイドルの価値が「物語」に移った

かつてアイドルの価値は歌やダンスの完成度で測られた。今はそこにたどり着くまでの物語こそが商品だ。BE:FIRSTもJO1も、デビュー時点で結果を知る何十万人の証人を抱えていた。この「過程の商品化」は当面続く。ただし、どの番組も同じ感動の型を繰り返せば、視聴者はいずれ既視感で離れる。2026年の夏は、アイドルを量産する装置が飽和点に近づいた季節として記録されるだろう。作られる物語が多すぎるとき、最後に生き残るのは物語の巧拙ではなく、番組が終わった後に何を歌えるかだ。

参照ソース(噂の出どころ)

モデルプレス「≠ME、新メンバー追加オーディション開催発表」(26/06/26)
UtaTen「2026年オーディション番組一覧」(26/07/01)

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