スマートグラスの最前線から、日本はしばらく外されていた。Metaがレンズ内ディスプレイ搭載モデルを出しても日本は対象外、Googleの新型は今秋の話。翻訳も撮影もできるが、目の前に何かを表示してくれる製品は国内で買えない状態が続いた。その空白に、真っ先に足を踏み入れたのは米国勢ではなかった。

98言語の翻訳を積んで、99,800円で来る

イノモ日本株式会社は、AIスマートグラス「INMO GO3」を2026年7月30日に発売する。リアルタイム双方向翻訳、AIテレプロンプター、AIによる会議サポートと議事録作成、マップナビゲーション、日常のAIアシスタント機能を搭載し、翻訳は98言語に対応、うち9言語はオフラインでも動作する。希望小売価格は99,800円だとのことです。(ケータイ Watch/26/07/16)

中身を見ると狙いが透けて見える。両眼グリーンMicro-LEDスクリーンと回折光学導波路のディスプレイを備え、デュアルコアCPUとRTOSで動く。メモリは256MB、ストレージは64GB。重量は約58gで、アルミニウム合金とポリアミドを組み合わせている。(Gadget Gate/26/07)

メモリ256MBという数字に驚いてはいけない。これはスマホの縮小版ではないという宣言である。汎用OSを積まず、RTOSで用途を絞り、翻訳と表示に必要な処理だけを回す。だからこそ58gに収まり、10万円に収まる。

「世界No.1」の中身を正しく読む

INMOは、Frost & SullivanのAI+ARスマートグラス市場調査において、オールインワン型AI+ARスマートグラスの2021年から2025年における累計販売台数で世界No.1と認定されたブランドだとされる。(PR TIMES(イノモ日本)/26/07)

ただし注釈は丁寧に読む必要がある。ここでの世界No.1は「オールインワン型AI+ARスマートグラス」という区分での累計台数だ。スマートグラス全体で見れば、IDCの調査で昨年の世界出荷の76%をMetaが押さえている。INMOが強いのは、Metaがまだ本気で取りに来ていない、単体で表示と処理まで完結するカテゴリのほうである。巨人が空けていた隙間で積み上げた実績、というのが正確な位置づけになる。

先に来たのが表示付きだったという逆転

この製品が興味深いのは、性能そのものより順番である。Metaはレンズ内ディスプレイとリストバンドによる神経制御へ主戦場を移したが、日本で買えるRay-Ban MetaやOakley Metaは翻訳と撮影に留まり、ディスプレイ版は対象外のままだ。7月10日にはRokidのスマートAIグラスが一般販売を始め、専用OSを持つ勢力も国内に入ってきている。(MoguLive/26/07)

結果として、日本のユーザーが最初に触れる「目の前に文字が出るメガネ」は、米国の巨大プラットフォームではなく中国発のブランドになる公算が高い。スマホの時代には考えられなかった順序だ。あのときは常にAppleとGoogleが先に来て、その後を各社が追った。表示付きスマートグラスでは、その序列が崩れている。

10万円の価値は「翻訳できるか」では決まらない

とはいえ、99,800円は安い買い物ではない。98言語の翻訳はスマホアプリでもできるし、議事録作成はPCのほうが快適だ。このメガネが売るのは機能ではなく、スマホを取り出さずに済むという一点である。会話中に画面を見ない、旅先で手がふさがらない、相手の目を見たまま字幕が読める。その体験に10万円を払えるかどうかが、唯一の判断基準になる。

逆に言えば、そこが弱ければ何語対応でも意味がない。58gという重さと、表示の読みやすさと、翻訳の遅延。この3つが実用に届いていれば売れるし、届いていなければ数字上の世界No.1は日本で通用しない。

空白は必ず誰かが埋める

この一件が示すのは、市場の空白は放置されないという単純な事実だ。Metaが日本を後回しにし、Googleが秋を待つあいだに、価格も機能も現実的な製品が先に棚に並ぶ。ユーザーはブランドの都合を待たない。先に体験を提供した側が、そのカテゴリの原体験を決める。

7月30日に問われるのは、INMO GO3が良い製品かどうかではない。日本のスマートグラス市場の第一印象を、米国勢が自ら手放してしまったという事実のほうである。ここで中国ブランドが体験の基準を作れば、秋に来るGoogleもMetaも、後から追う側に回る。

参照ソース(噂の出どころ)

AIスマートグラス「INMO GO3」7月30日に日本で発売(ケータイ Watch/26/07/16)
“毎日使えるスマートグラス”「INMO GO3」日本上陸。実用的な機能を追求、価格は99,800円(Gadget Gate/26/07)
世界No.1 AIスマートグラスブランド、日本初上陸 毎日使えるスマートグラス「INMO GO3」、7月30日発売(PR TIMES/イノモ日本/26/07)
日本で販売中のスマートグラス情報まとめ、用途別のおすすめや購入時の注意点も解説【2026年7月時点】(MoguLive/26/07)

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