40年ぶりの円安なのに、日経は千円超も崩れた

教科書には、こう書いてあったはずだ。円安は輸出企業の追い風で、株高につながる、と。ところが2026年7月の東京市場は、その方程式を平然と裏切っている。7月14日の日経平均は前日比で約1315円、率にして1.9%あまり下落し、6万7000円台前半へ沈んだ。前日13日も一時1300円を超える急落を演じたばかりだ。その裏で、ドル円は162円台へと上昇し、40年ぶりとも言われる歴史的な円安圏に張りついている。円が売られ、株も売られる。片方が下がればもう片方が上がるという長年の相関が、いま音を立ててほどけている。

下げの主役は「半導体一本足」だった

相場を崩したのは、これまで日経を押し上げてきた当の主役、AI・半導体関連銘柄である。株価指数の上昇局面で稼ぎ頭だった一群が、いざ調整が始まると最大の重石に反転した。指数寄与度の高い数銘柄が売られれば、それだけで日経は数百円単位で振らされる。上げも下げも半導体次第という「一本足」の構造が、下落局面でむき出しになった格好だ。円安による輸出採算の改善という好材料も、AI投資の持続性への疑念という重い問いの前では、かき消されてしまう。「世界的なAI・半導体関連銘柄への売り圧力の強まりなどから下落した」とされる。(宮野宏樹「日本市場レポート」/26/07/14)

地政学リスクが円安を「悪い円安」に変えた

今回の局面をさらにややこしくしているのが、中東情勢だ。アメリカがイランへの追加攻撃に踏み切ったと伝わり、市場は一気にリスク回避へ傾いた。有事は本来なら円買い材料になりうるが、日米の金利差という重力が強すぎて、円は買い戻されるどころか売られ続ける。原油高への警戒も重なり、円安は「輸入コストを膨らませる悪い円安」の色を濃くした。「13日のニューヨーク外為市場でドル・円は162円07銭から162円48銭まで上昇した」という。(財経新聞/26/07/14)

円安が株高を呼ぶという古い等式は、輸出主導で日本経済が回っていた時代の産物だ。いまや日経を動かすのは、東京の輸出採算よりも、米国のデータセンター投資がどこまで続くかというシリコンバレー発の期待である。円がいくら安くなろうと、AI設備投資への疑念が広がれば半導体は売られ、日経はそれに引きずられる。為替は、もはや株価の運転席には座っていない。

「円安は買い材料」という思い込みが一番危ない

投資家がいま点検すべきは、円安を反射的に株の買い材料と見なす癖そのものだ。40年ぶりの水準という数字のインパクトに引きずられて「これだけ円安なら輸出株は安泰」と構えると、半導体一本足の下振れをまともに食らう。円安の恩恵を受ける銘柄は確かに存在するが、指数全体の生殺与奪を握っているのは為替ではなく、AI投資という一本の綱だ。その綱の強度は、7月下旬に集中する米ハイテク大手の決算で試される。

円安でも株が下がるという今回の現象は、単発の異変ではなく、日本株の体質が変わったことの表れと見るべきだ。為替を見て株を語る時代は終わり、いまは太平洋の向こうのAI投資を見て日経を語る時代に入っている。方程式の左辺と右辺が入れ替わったことに気づかない投資家から、静かに退場していく。

参照ソース(噂の出どころ)

7月13日のNY為替概況(財経新聞/26/07/14)

日本市場レポート 2026年7月14日(宮野宏樹/26/07/14)

コメントを残す

Trending