2026年、米国株で最も値上がりした銘柄は、エヌビディアでもテスラでもない。多くの人が名前すら聞いたことのない「記憶装置」の会社、SanDisk(ティッカーSNDK)である。年初からの上昇率は6月末時点で781%。S&P500構成銘柄の中で堂々の最強だ。半導体の話題といえばエヌビディアのGPUやHBMメモリに集中しがちだが、その陰でNANDフラッシュという地味な部品を作る会社が、静かに、しかし猛烈に化けていた。ここには2026年のAI相場の本当の姿が透けて見える。

「地味な会社」がS&P500最強になった数字

SanDiskはスマホやSSDに入るNAND型フラッシュメモリの大手で、2025年初にウエスタンデジタルから分離独立したばかりの会社だ。その株価は分離以来4,000%超も上昇し、6月中旬には1株2,000ドルを突破した。6月29日時点の株価は約2,050ドル、年初来では781%高と、この年のS&P500で最も稼いだ銘柄になっている。DRAMやHBMがAIサーバーの主役として脚光を浴びる一方で、NANDという「保存する側」の部品を握るこの会社が、指数全体の勝ち頭になっていたという事実は、もっと知られていい。(TradingKey・26/06/29)

決算が示した「AIの記憶コスト」爆発

株価の裏づけは、決算数字にきちんと表れている。2026年度第3四半期の売上高は前年同期比251%増、前四半期比でも96.69%増の59.5億ドル。純利益は前四半期比350%増の36.15億ドルに跳ね上がり、調整後EPSは23.41ドルと、市場予想の14.50ドルを大きく上回った。前年の2.5倍を超える売上という伸びは、通常の半導体サイクルでは説明がつかない。生成AIは学習にも推論にも膨大なデータを保存する必要があり、その「記憶のコスト」がいまSanDiskの売上として噴き出している。AIブームは演算だけでなく、保存の需要まで丸ごと押し上げているのだ。(Investing.com・26/06/29)

強気の目標株価が語る「2027年以降も足りない」

相場を追う投資家がいま最も気にするのは、この上昇がどこまで続くのかという点だろう。証券各社の見立ては強気だ。シティグループは目標株価を2,025ドルから2,500ドルへ、バーンスタインは3,000ドルへと引き上げた。シティは、NANDの業界需要が供給を上回っており、あらゆる分野でAI関連需要が積み上がっているため、逼迫した需給が2027年以降も続くと指摘している。(TradingKey・26/06/29) DRAMやHBMの品薄はここ数カ月さんざん語られてきたが、NANDもまた同じ構造的不足に入っている。記憶装置全体が「余るもの」から「奪い合うもの」へ変わったことが、SanDiskという一銘柄の暴騰に凝縮されている。

日本の投資家が読み取るべき教訓

この現象から日本の個人投資家が得られる示唆は二つある。一つは、AI相場の恩恵は演算チップの中心銘柄だけに集中しているわけではないということだ。NANDのSanDisk、あるいは同じ土俵に立つキオクシアのように、少し外側にある「保存する会社」にまで恩恵が広がっている。物色の軸は主役の周辺へと確実に染み出している。もう一つは、781%という数字の裏にある危うさだ。需給の逼迫と過去最高の決算が同時に来ている今は、まさに絶頂に見える局面でもある。メモリは歴史的に好不況の波が激しい分野であり、「今回は違う」という言葉が最も危ういのが半導体の世界だ。SanDiskの急騰は、AIが生む需要の本物さと、それに賭ける市場の過熱、その両方を映す鏡として見ておくべきだろう。買い遅れを悔やむより、周辺まで広がった物色の構造と、サイクルの反転リスクを冷静に測ることのほうが、これからの相場では効いてくる。

参照ソース(噂の出どころ)

SanDiskの株価はスピンオフ以来急騰している(TradingKey・26/06/29)
SanDiskの株価が本日急騰した理由とは?(Investing.com・26/06/29)
ストレージ大手サンディスク、バーンスタインが目標株価を3,000ドルに引き上げ(TradingKey・26/06/29)

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