「東京の中古マンションは過去最高値圏」という見出しと、「都心3区で成約価格が前年比2割減」という見出しが、同じ2026年6月に並んで流れている。一見すると矛盾するこの二つは、どちらも事実だ。指数や平均価格は上昇を続ける一方、実際に売買が成立した価格は急落している。この食い違いの正体を読み解くと、都心マンション市場でいま本当に起きていることが見えてくる。

都心3区、成約価格が前年比20.3%減

2026年5月度、東京都心3区(千代田・中央・港)の中古マンション成約平均価格は1億1723万円となり、前年同月比でマイナス20.3%、前月比でもマイナス15.8%まで下落した。成約件数は198件と前年比25.8%減で、5カ月連続のマイナスである。(ダイヤモンド不動産研究所)数字だけを見れば「バブル崩壊」「大暴落」と叫びたくなる落差だ。しかし、この20%という数字の中身を分解すると、まったく別の風景が現れる。

「平均が下がった」だけで価値は下がっていない

成約価格が20%下がった一方で、成約物件の坪単価の下落は13%にとどまる。差を生んだのは、売れた物件の中身だ。成約物件の平均築年数は20.6年から24.9年へと4.3年も古くなっている。つまり、相対的に価格の安い築古物件の成約割合が増えたために、平均価格が押し下げられた側面が大きい。(東洋経済オンライン)1平方メートルあたりの価値が2割落ちたわけではない。これは「暴落」ではなく、統計の平均が映し出す錯覚に近い。高額物件が売れ残り、手頃な築古ばかりが成約しているのだ。

本当の問題は「膠着」にある

市場の本質は値下がりではなく、売り手と買い手のにらみ合いにある。売出価格は1億9705万円と高止まりし、成約価格との差は約8000万円に達した。一方で在庫件数は4553件と前年比43.7%も増えている。売り手は高値を引っ込めず、買い手は金利上昇もあって高値づかみを避ける。結果、高額帯の物件が動かず在庫として積み上がり、成立するのは値ごろ感のある築古ばかり——これが成約平均を押し下げる構図だ。価格が崩れたのではなく、高すぎて売れない物件が市場に滞留している。

「指数」ではなく「成約の中身」を見よ

新築価格や売出指数だけを追っていると、市場はいまだ上昇基調に見える。だが取引の実態は、高値圏での需要の細りと在庫の膨張という明確な変調を示している。これから売る人は「指数が高いから自分の物件も高く売れる」という前提を捨てるべきだ。実際に売れているのは値ごろ物件であり、高値の売出は数字の上で在庫を太らせているだけかもしれない。都心マンションは暴落していない。だが、強気の値付けがそのまま通る時代は、静かに終わりつつある。

参照ソース(情報の出どころ)

都心3区の中古マンション価格が前年同月比-20.3%(ダイヤモンド不動産研究所・26/06):(ダイヤモンド不動産研究所)

都心3区マンション“大暴落”に見えるのは当然だった(東洋経済オンライン・26/06):(東洋経済オンライン)

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