2026年6月25日、日経平均は前日比613円安で取引を終えた。一時は1300円超まで下げ幅を広げ、AI・半導体株への利益確定売りが相場を揺らした場面もあった。市場の関心はもっぱら株価の乱高下に向くが、その裏で日本企業の決算をひそかに底上げしている数字がある。「想定為替レート」だ。多くの企業が実勢よりはるかに円高の前提で計画を組んでおり、その差が丸ごと利益の上振れに化けようとしている。
想定147円、実勢161円という14円の谷
帝国データバンクの調査によれば、2026年度に企業が見込む想定為替レートは平均で1ドル147円87銭。前年5月時点の139円64銭から8円あまり円安方向に修正されたものの、それでも実勢には遠く及ばない。(帝国データバンク)6月25日の東京市場でドル円は161円台で推移しており、実勢と想定の差は14円に達する。(三井住友銀行)輸出企業にとって1円の円安は数十億から数百億円規模の営業利益押し上げ要因になる。14円の谷は、決算期を追うごとに「計画より儲かった」という形で現実化していく。
企業はなぜ強気の円安を前提にしないのか
不思議なのは、実勢が160円台で定着しているのに、企業の3分の1超が156〜160円という比較的控えめな水準で計画を組んでいる点だ。(QUICK Money World)規模別では大企業でも151円台の想定にとどまる。理由は単純で、為替が逆回転したときに計画を下方修正する痛みを企業は何より嫌うからだ。低めに見積もっておけば、円安が続く限り「上振れ」しか起きない。保守的な前提は、経営の臆病さであると同時に、株主にとっては安全マージンでもある。この慎重さこそが、決算シーズンごとに上方修正が連発される土壌を作っている。
株が乱高下しても決算が崩れにくい理由
6月の日本株はAI半導体の一本足相場と批判され、値動きは荒い。だが為替の追い風は、株価の波とは別の次元で企業業績を支える。株価が短期の需給で上下しても、円安による為替差益は時間をかけて確実に決算に積み上がる。市場が利益確定で揺れている裏で、企業の実力値はむしろ底堅さを増している構図だ。だからこそ、当日の急落だけを見て「相場の終わり」と決めつけるのは早計といえる。
追い風が止まるときに何が起きるか
とはいえ、この構図は円安が続く限りという条件付きだ。仮に為替介入や日銀の利上げでドル円が150円を割れば、想定147円との差は一気に消え、上方修正の燃料は枯れる。実勢が想定に近づくほど「隠れた利益」は剥がれ落ちる。日本株を本当に支えているのはAIへの期待でも企業改革でもなく、保守的な想定為替と円安実勢の14円の谷である。その谷が埋まる日こそ、相場が試される本番だ。投資家が見るべきは日々の株価より、この為替の谷がいつ埋まるかである。
参照ソース(情報の出どころ)
企業の想定為替レートに関する動向調査(2026年度)(帝国データバンク・26/06/12):(帝国データバンク)
全上場企業の想定為替レート一覧(2026年6月15日時点)(QUICK Money World・26/06/15):(QUICK Money World)
為替市場コメント 2026年6月25日(三井住友銀行・26/06/25):(三井住友銀行)





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