2028年前期朝ドラのヒロインが決まった
6月4日、NHKが2028年前期連続テレビ小説「ほんのモキチ」のヒロインに河合優実を起用すると発表した。脚本は宮藤官九郎。「あまちゃん」「不適切にもほどがある!」で知られる脚本家と、「アンメット ある脳外科医の日記」「若い僕は」で頭角を現した女優の組み合わせは、朝ドラ史上でも異色の布陣だ。まだ2年先の発表を今の段階で行ったこと自体、NHKの本気度が伝わってくる。
河合優実という女優が持つもの
1999年生まれの河合優実は、一般的なアイドル的ヒロインとはまったく異なる文脈で評価を積み上げてきた。彼女の演技の核心にあるのは「考えている顔」だ。セリフがなくても、カメラの前で何かを思考しているように見える稀な能力を持つ。「アンメット」では脳外科医という複雑なキャラクターを、感情の揺れを抑えながら表現することで賞賛を受けた。計算された大げさな演技ではなく、静かな内省が画面から伝わる。この特質は宮藤官九郎が求める「台詞行間の豊かさ」と高い相性を持つ。
宮藤官九郎が「選ぶ女優」の法則
宮藤官九郎の作品に登場する女性主人公には共通点がある。「ただ可愛いだけでは成立しない複雑さ」だ。「あまちゃん」の能年玲奈(現・のん)は無邪気さと世界観の独自性を持ち、「不適切にもほどがある!」の仲里依紗はコミカルと真剣を往復する幅の広さで脚本に応えた。いずれも「ヒロインらしさ」の枠に収まらない個性が前提だった。河合優実が持つ「計算されていないように見える計算」は、この系譜に完全に合致する。宮藤脚本が「この人でなければ」と感じさせる女優とは、型を外す技術を持つ人だ。
2028年という時期の発表が持つ意味
通常、朝ドラのヒロイン発表は放送1年前が多い。2028年前期となれば今から約2年先だ。NHKがこの段階で発表した背景には、河合優実のスケジュールを早期に確保する必要があったことと、朝ドラの製作体制が「先行確定型」へと移行していることが読み取れる。映画・配信・海外案件が重なる売れっ子女優のスケジュールは埋まるのが早い。2028年の放送を成立させるには、今動き始める必要があった。
朝ドラが「実力派女優の登竜門」に戻る流れ
近年、朝ドラのヒロインはアイドル出身者やタレントが選ばれるケースが続いていた。河合優実+宮藤官九郎という組み合わせは、それとは明らかに異なる方向性を示している。視聴率よりも話題の質を求めるNHKの戦略転換として読み解くことができる。「ヒロインが人気者」ではなく「ヒロインによって女優が生まれる」という朝ドラ本来の機能が、2028年に問われることになった。




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