2026年に入り、イヤホン市場に明確な転換点が訪れた。完全ワイヤレスの密閉型が主役だった市場に、「オープンイヤー型」が急速に食い込んでいるのだ。Shokzが1月のCES 2026でOpenRun Maxを発表し、SonyはLinkBuds Fit 2に心拍数モニタリングを搭載して投入。オープンイヤー型市場は2025年の82億ドルから2033年に189億ドル規模へと拡大する見通しだという。(Dataintelo

完全ワイヤレスが抱えていた「詰まり感」問題

AirPodsに代表される密閉型の完全ワイヤレスは、音質とノイズキャンセリング性能を高めてきた。しかしその代償として「耳の閉塞感」と「環境音が聞こえない不安」が常についてまわった。特に都市部でのランニング、在宅勤務中の「ながら聴き」、長時間の装着疲れを感じるユーザーにとって、密閉型は快適さと安全性の面で限界があった。ANCが進化するほど「耳が塞がれている感覚」は強くなる。オープンイヤー型は、その根本的な不満への回答だ。

Shokzが切り開いた「ながら聴き」の文化

骨伝導イヤホンのパイオニアであるShokzは、2026年1月のCES 2026でOpenRun Maxを発表した。デュアルトランスデューサー構造により低音再生が従来比35%向上し、AIによる自動音場調整機能も搭載した。また同社のOpenFit Proは北米市場で特に好評を博しており、「スポーツ×日常」という二刀流のポジショニングを確立している。

「耳を塞がない」という機能は、かつてはニッチな需要だった。しかし在宅勤務の定着とウェアラブル健康機器への関心の高まりが、この市場を一気にメインストリームへと押し上げた。Shokzがここまでの市場を拓いた功績は大きい。

SonyがLinkBudsに健康機能を持ち込んだ理由

Sonyは2026年、LinkBuds Fit 2に「EarScan 3D」という耳の形状を3Dスキャンして音響特性を個別最適化する機能を搭載した。さらに、Sonyのオープンイヤー製品として初めて心拍数モニタリング機能を追加した。これはイヤホンをヘルスウェアラブルとして再定義する戦略であり、Apple WatchやGarminが争うスマートウォッチ市場への「別ルートからの参入」とも読める。音楽を聴きながら心拍数を測るというコンセプトは、スポーツユーザーにとって理想的な形だ。Sonyがこれをオープンイヤーで実現したことで、「ランニング中に外音も聞こえてヘルスデータも取れる」という市場の空白を埋めた。

Appleは「開放型」に向かうのか

残る問いはAppleの動向だ。現時点でAirPodsシリーズに完全なオープンイヤーモデルは存在しない。しかしWWDC 2026(6月8日)でのAirPods関連発表が注目されており、iOS 27の補聴器機能強化と合わせて、Appleが「開放型」へと舵を切る可能性は排除できない。ANCと開放型の共存、つまり「切り替え可能なオープンイヤー」こそがAppleが狙う次の一手ではないかと私は予想する。それが実現すれば、オープンイヤー市場は第二の爆発的成長期を迎えることになる。耳を「塞ぐ」か「開く」かの選択は、もはや個人の好みではなく、ライフスタイルそのものの選択になりつつある。

参照ソース(噂の出どころ)

Open-Ear Bluetooth Headphones Market Research Report 2033(Dataintelo, 26/06)

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