価格と性能のはざまで
2024年11月に$700で登場したPS5 Proは、発売当初から「高すぎる」という批判を受けながらも、それなりに売れた。Circanaのゲームアナリスト、Mat Piscatellaは「PS5 ProはPS4 Proと同水準で売れており、$700という価格を考えれば一定の成功だ」と評価している。しかし2025年8月には$750、さらに2026年4月には$900へと値上がりし、2年間で$200もの値上げを食らったユーザーたちは怒りを隠せない。
問題はPrice Tagだけではない。PS5 Proの性能を象徴するはずだったPlayStation Spectral Super Resolution(PSSR)が、発売直後から多くのゲームで期待を裏切る結果を招いた。Silent Hill 2 Remake、Star Wars Jedi: Survivor、Avatarなど、複数の話題作でPSSRを有効にすると映像品質が向上するどころか、むしろ画面に不自然なちらつきや歪みが生じる事態が続発したのだ。
PSSRという「技術」の誤算
PSSRはNVIDIAのDLSSやAMDのFSRと同様、低解像度で描画した映像をAIで高解像度に引き伸ばすアップスケーリング技術だ。ソニーはAMDと協力し、PS5 ProのSoC上にカスタムの機械学習ハードウェアを実装、自社ファーストパーティータイトルで訓練させた。Gran Turismo 7では8Kモードが実現するなど、ソニー製タイトルでは実際に素晴らしい成果を見せた。
しかしDigital Foundryの分析によると、「PSSRはレイトレースベースのライティングを使用した低解像度タイトルでは機能しない。ソニーが自社ゲームで訓練させた際、レイトレースを使うタイトルが少なかったからだ」という。サードパーティーにとってPSSRのサポートは追加実装が必要な別作業であり、対応が後回しにされやすかった。
さらに根本的な問題がある。PS5 Proは全PS5販売台数のごくわずかしか占めないニッチなコンソールであり、開発スタジオにとってPSSR向けに追加で最適化するインセンティブが薄い(ComicBook、25/09/22)のだ。ユーザーベースが小さければ、テストや最適化のリソースも限られる。結果として「PS5 Proでしか発生しない不具合」が多発し、プラットフォーム全体の信頼性を損なった。
「PSSR 2.0」は救世主になれるか
2025年初頭、PlayStationのリードアーキテクト、Mark Cernyは2026年にPSSRの大型アップデートを提供すると明言した。そして2026年2月末、Resident Evil Requiemの発売に合わせてアップデートが届いた。ソニーはこのPSSRアップデートについて、ソニーとAMDの共同プロジェクト「Project Amethyst」の成果であり、新世代のニューラルネットワークとデータセットで訓練し直したことで、エッジの鮮明さ、シマー(ちらつき)の低減、テクスチャやライティングの精度が大幅に向上したと説明している(Game Rant、26/02/28)。
すでにResident Evil Requiemでは髪の一本一本がポリゴンで描画されるレベルの品質向上が確認されており、今後の対応タイトル拡大に期待が高まる。だが皮肉なのは、このアップデートが届いた2026年春の時点で、PS5 Proの本体価格は$900に達してしまっていることだ。
$900のPS5 Proを今買うべきか
2026年4月、価格が$900へ跳ね上がる直前のタイミングで、Kotakuは「$900のPS5 Proは絶対に買うな」という刺激的な見出しの記事を掲載した(Kotaku、26/03/27付近)。その論点はこうだ――GTA 6やMarvel’s Wolverineがコンソール先行で届く2026年後半〜2027年初頭、PS5 Proが最も輝く時期が来る。しかし、その頃にはさらなる値上げもあり得る。かといって待てばPS6の方が性能は高い。PS5 Proを$900で買う必然性がどこにあるのか、と。
もう一つの現実がある。メモリ価格の高騰という業界全体の問題だ。TrendForceのレポートは、メモリがPS5原価の約35%を占めており、AI向けデータセンターへのメモリ需要がゲーム機の製造コストを直撃していると指摘する。この状況が2028年まで続けば、ソニーはPS6の価格を合理的な水準に抑えるのが難しくなると予測している(Notebookcheck、25/12/04)。
「失敗作」という評価の真相
PS5 Proを「失敗作」と呼ぶのは少々乱暴だ。GPUは45%高速化され、ソニー製タイトルでの体験は確かに向上した。PS5全販売台数に占める比率は「ひと桁台前半」に過ぎないが、発売初期のPS4 Pro並みには売れた。PSSR 2.0の投入で技術的な問題は改善しつつある。
しかし「$700で登場し、わずか1年半で$900になった」という事実は、コンシューマーハードウェアの歴史の中でも異例だ。これを引き起こしたのは貪欲な企業戦略だけではない。AI需要が引き起こしたメモリ危機、開発者の協力不足、トランプ関税――複数の悪条件が重なった結果だ。ソニーだけを責めるのも公平ではないが、$900というハードルは多くのユーザーにとって越えられない壁になっている。GTA 6の発売が近づく2026年後半が、PS5 Proにとって「本当の真価が問われる時期」になるだろう。
参照ソース(噂の出どころ)
PS5 Pro Is Becoming One of the Worst PlayStation Consoles Ever, But It’s Not All Sony’s Fault — ComicBook
Sony Confirms PS5 Pro All Set to Get Upgraded PSSR Upscaling Soon — Game Rant
You Should Buy A PS5 Pro This Week, Or Never Buy One — Kotaku
Slower PS5 and Switch 2 sales expected in 2026 — Notebookcheck
PS5 Pro PSSR 2.0 Update Arriving in March With Major Image Quality Improvements — NoobFeed




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