音楽ストリーミングの競争は長らく「カタログの広さ」を軸に争われてきたが、2026年の争点は明確に「AIによる個人最適化の精度」に移りつつある。Spotifyが2026年1月22日に米国・カナダで正式スタートさせた「Prompted Playlist(プロンプテッド・プレイリスト)」は、その象徴ともいえる機能だ。「初めての夜明けドライブに合う曲」「レコードコレクターの先輩が好みそうなB面集」など、従来のプレイリスト生成では表現しきれなかった「個人的な情感」を言葉にして入力するだけで、Spotifyが専用のプレイリストを生成してくれる。

Prompted Playlistとは何か――AIプレイリストとの違い

SpotifyはすでにAI Playlistという類似機能を持っていたが、Prompted Playlistはその上位互換に近い。AI Playlistが「集中できる作業用のインストゥルメンタル」のようなシンプルなプロンプトに対応していたのに対し、Prompted Playlistでは「2000年代初頭の大学時代を思わせる曲に、最近人気TVドラマのサウンドトラックっぽいテイストを混ぜて、テンポは上げすぎず」といった複雑な自然言語の指示が通る。

Spotifyは公式ブログで「Prompted Playlistは、リスナーが自分の言葉で聴きたいものを描写し、Spotifyがその考えとリスニング履歴、そして今の音楽シーンで起きていることを組み合わせてプレイリストを生成する新しい方法だ」と説明している。(26/01/22)

仕上がったプレイリストは最大50曲が表示され、毎日・毎週単位で自動更新する設定も可能。また、生成されたプレイリストを友人と共有すると、その友人の趣味嗜好に合わせて楽曲がパーソナライズされた別バージョンに変換されるというソーシャル機能も備える。なお現時点では米・カナダのプレミアム会員限定のベータ版であり、グローバル展開の時期はまだ明示されていない。

AI DJも着実に進化――テキストリクエストとスペイン語対応

Prompted Playlistの登場に注目が集まりがちだが、既存のAI DJ機能も静かに機能強化を重ねている。2025年10月には英語・スペイン語でのテキストリクエストに対応し、声に出さなくても画面タップだけでDJに「ムードを変えて」と伝えられるようになった。通勤中や静かな場所でも使いやすくなったこの改善は、ユーザーのSNSでも好意的に受け止められた。

TechCrunchは「Prompted Playlistは以前のAIプレイリスト機能を基盤にしているが、より詳細な会話形式で、聴きたい内容を説明できる点が異なる」と位置付けた。(26/01/22)

Spotifyが2025年に導入した機能は25項目にのぼる。AI Playlistの40カ国以上への展開、音楽ビデオのプレミアム向けベータ提供、ChatGPT連携(SpotifyにChatGPTから楽曲やポッドキャストを直接リクエスト可能)、フォローフィード、スマートフィルターなど、UI/UXの観点では大幅な刷新が行われた。2025年が「機能の土台づくり」の年だとすれば、2026年はそれらの精度を磨いていく年と位置づけられそうだ。

Netflix連携ポッドキャストと価格改定――Spotifyを取り巻く環境変化

AIによる機能強化と並行して、Spotifyは事業面でも大きな動きを見せている。ひとつはNetflixとのポッドキャスト提携だ。Spotifyの主要ポッドキャストのビデオ版をNetflixで視聴できるようにする協定を締結し、2026年初頭から米国で展開が始まった。

また、Spotifyは2026年2月から米国のプレミアム料金を月額11.99ドルから12.99ドルへ引き上げた。同時に、創業者のDaniel Ek氏がCEOから会長職に異動したことも話題を呼んだ。一部のアーティストが防衛技術企業へのEk氏の投資姿勢に抗議してプラットフォームを去るという事態も起きており、Spotifyがユーザーと音楽コミュニティの双方から支持を維持し続けるための舵取りが問われている。

SongDNAとAI生成楽曲ポリシー――透明性への問い

アプリコードの解析で知られるJane Manchun Wong氏が「SongDNA」と名付けられたベータ機能の存在を明らかにした。これは楽曲の制作に関わったミュージシャンや作曲家の情報を詳細に表示する機能で、AI生成楽曲に関する帰属情報の開示も含まれる可能性がある。Spotifyは2026年時点でAI生成楽曲の投稿を「透明性確保の条件付きで」認めており、トレーサビリティの確保を義務づける方向で業界標準への対応を進めている。

CNBCは「この機能はAIを使い、感情・記憶・雰囲気からプレイリストを生成するもので、米・カナダのプレミアム会員にベータ版として提供が開始されている」と報じた。(26/01/22)

音楽ストリーミングのAI競争の先にあるもの

Apple MusicもYouTube MusicもAIを活用したリコメンデーション強化を進めているが、Spotifyが持つリスニングデータの規模と、OpenAIとのパートナーシップを通じた生成AI技術の活用は、現時点での差別化要因になっている。Prompted Playlistはまだベータ版であり、グローバル展開がいつになるかは不明だ。しかし「言葉で気分を伝えたら、ぴったりの音楽が返ってくる」という体験が標準化されれば、プレイリスト文化そのものの定義が変わる可能性がある。感情の言語化を支援するAIと、膨大なカタログを持つ音楽プラットフォームの組み合わせがどこへ向かうのか。2026年は、その輪郭が見えてくる年になりそうだ。

参照ソース(噂の出どころ)

Prompted Playlist in Beta Coming to Premium Listeners in More Markets – Spotify Newsroom
Spotify brings AI-powered Prompted Playlists to the US and Canada – TechCrunch
Spotify’s new playlist generator lets you add your vibes, feelings or memories – CNBC
25 Ways Spotify Leveled Up Your Listening in 2025 – Spotify Newsroom
Spotify roundup: AI DJ’s evolution, ICE ads and SongDNA leak – Music Ally

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